『 一福屋 』

幼い頃、毎年夏休みになると母の実家がある福島県の双葉町へ行きました。必ず長期滞在になり

時には1ヶ月丸々過ごしたこともあります。 私にとって母の実家は楽しい思い出も、悲しい思い出

も沢山ある、第2の故郷とも呼べる大切な場所です。

 

そんな双葉での思い出の味は沢山ありますが、やはり「一福屋」さんのラーメンと餃子は外せません。

昼近くになると、誰かしら出前を提案します。

 

私たちと同じく帰省した伯母や従兄弟達もいるので
タンメン、焼きそば、チャーハン、野菜炒め、餃子etc・・・

注文はいつも大量です。
出前持ちに来るお姉さんも、1度には運べず

2回に分けて届けてくれました。料理を作るお店の人も

配達するお姉さんも、さぞかし大変だった事でしょう。

 

食べる私たちも、まるで戦場のような有様でした。
そこに、血縁者としての情やいたわりは皆無です。

特に大人気だったのは餃子。 もう、競争率高すぎ。
年齢の一番下だった私の口へなんか、なかなか入りません。

 

でも当時は、味とか量とかよりも、むしろ食事している皆の満足げな顔と、麺をすすりながらの

 「ん、旨い!」のセリフ。 その瞬間の幸福の空気が、心地よかった事が強く印象に残っています。

 

 

一昨年、何年かぶりに双葉へ行き
お昼に一福屋の出前をとりました。
注文したのは定番メニューのラーメンと餃子。

 

衝撃的でした。

それは都会では滅多に食べられなくなった

昭和の醤油ラーメン。

 

麺の上には「なると」「ほうれん草」

いつからでしょう。 この具材がラーメンの上から姿を消していってしまったのは。

こみ上げる懐かしさ。 昔と変わらぬ味です。

 

そして餃子。
もう子供ではない私を阻む者は、誰もいません。 心おきなく餃子をほおばりました。
たしかに、競争率が高かっただけの事はあります。
にんにくが効いて、野菜の甘みタップリのおいしい餃子でした。

 

お腹いっぱいに食べましたが、胃袋だけでなく思い出の味に、当時の記憶もよみがえり
心も満腹に満たされた食事になりました。

 

以後、毎年1回はかならず双葉へ行き一福屋の料理を食べようと目標をたてました。

昨年も秋に訪れ、出前を頼みましたが前年の感動が忘れられず再度、ラーメンと餃子を食べました。

今年も行きます。
次こそは、チャーハンとか焼きそばとか注文する!!